持分なし医療法人への移行計画認定制度の解説~3回目~

第3回は持分なし医療法人制度への移行計画認定制度の内容について解説します。
「持分なし医療法人への移行計画認定制度」とは「持分あり医療法人」から「持分なし医療法人」への移行計画を国が認定する制度を設け、贈与税・相続税猶予等の税制措置を行うものです。
極めて簡単に言うと、認定を受けて持分なしに移行すれば、贈与税・相続税がかからない制度です。
(もちろん種々の要件を満たす必要はありますが・・・)

この制度が導入されたのは平成26年10月からであり、平成29年9月まで3年間の時限措置とされていましたが、これが平成32年9月まで延長されました。
つまり3年の予定であったものがもう3年、つごう6年に延長されたわけですが、当初の3年間(以下「旧制度」と呼びます)と延長後の3年間(以下「新制度」と呼びます)では、その内容が全くと言ってよいほど異なっています。

1.認定制度の概要(新制度)
持分なし医療法人への移行計画認定~移行~税制措置の手続きは、以下のような一連のstepで行われます。
 step1:持分なし医療法人へ移行するか否か検討し、意思決定(社員総会決議が必要)
 step2:持分なし医療法人への移行計画の策定
 step3:厚生労働大臣に対し、移行計画の認定申請(認定要件あり※①)
 step4:上記計画についての厚生労働大臣の認定(移行《計画》期間は認定日から最長3年)
 step5:所管庁(都道府県又は政令市)に対し認定医療法人である旨の定款変更の申請
 step6:定款の変更認可⇒厚生労働大臣に対し定款変更認可の報告
 step7:移行計画の進捗状況の報告(認定日から1年経過ごと)
 step8:出資持分の処分(持分放棄、払戻、相続等)
 step9:厚生労働大臣に対し、持分の処分の報告
 step10:所管庁に対し、残余財産帰属の定款変更認可申請
 step11:残余財産帰属の定款変更認可(移行完了※②)
 step12:移行完了日の翌年の3月15日までに贈与税の申告(納税猶予)書提出
 step13:移行完了後、1年を経過するごとに厚生労働大臣に対し運営状況(※③)を報告
 step14:移行完了から6年経過後、猶予された贈与税の納税が免除

こうして見るだけでもなかなか大変そうですね。

※①の認定要件は以下のとおりとなっています。
~運営方法に係る要件~
(1)法人関係者に対し、特別の利益を与えないこと
(2)役員に対する報酬等が不当に高額にならないよう支給基準を定めていること
(3)株式会社等に対し、特別の利益を与えないこと
(4)遊休財産額は事業にかかる費用の額を超えないこと
(5)法令に違反する事実、帳簿書類の隠蔽等の事実その他公益に反する事実がないこと
~事業状況の要件~
(6)社会保険診療等(介護、助産、予防接種含む)に係る収入金額が全収入金額の80%を超えること
(7)自費患者に対し請求する金額が、社会保険診療報酬と同一の基準により計算されること
(8)医業収入が医業費用の150%以内であること

これらの要件を満たし、移行計画が有効かつ適正であれば厚生労働大臣の判定により認定が受けられます。
さらに、認定を受けた法人の持分が放棄された場合、移行完了から6年間、上記の要件を満たしていれば、上記step14のとおり医療法人に対する贈与税課税の負担は生じません。
ただし、6年間の間に上記の要件を満たさないこととなった場合には、上記step12で猶予されていた贈与税の納税義務が生じますのでご注意ください。

※②の移行完了のための定款変更は、残余財産の帰属先を「出資持分に応じた分配」から「国、地方公共団体、公益法人等」に限定する旨の定款変更です。
持分あり法人で定款にあった退社時の持分に応じた払戻の規定は単純に削除することになります。

※③運営に関する要件に該当していることを説明する書類の提出が必要です。

2.旧制度下での認定
旧制度では移行計画を策定しその計画が適正であれば、上記(1)から(8)の要件を満たしていなくても厚生労働省へ申請を行うだけで認定が下りました。
その反面、持分なし法人へ移行した際には、医療法人に対して贈与税が課税される可能性があり、贈与税が課税されないためのハードルは非常に高いものとなっていました。
非課税となる要件は相続税法施行令第33条第3項に規定されていますが、その中で特に実務上のハードルとなったのは以下のような点です。

 (1)同族関係者等が役員等の総数の3分の1以下であること(同族経営不可)
 (2)理事6人監事2人以上、など一定の事項が定款で定められていること
 (3)その事業が社会的存在として認められる程度の規模を有していること

(1)(2)の条件とも非常に厳しいのですが、(3)については2とおりの要件がありました。
ひとつは「特定医療法人」の要件に準拠した要件を満たすこと、もうひとつは「社会医療法人」の要件に準拠した要件を満たすことです。
ひとつめの特定医療法人に準拠した要件では、例えば診療所の場合は15以上、病院の場合は診療科にもよりますが、原則40床、最低30床以上の病床を有していることが必要となります。
したがって、無床のクリニックや30床未満の小規模な病院の場合、この要件を満たすことができませんでした。
ふたつめの「社会医療法人」の要件に準拠した要件では、「病院、診療所の名称が医療連携体制を担うものとして医療計画に記載されていること」というくだりがあり、いわゆる5疾病5事業と関係のない医療行為を行う医療法人は、この要件を満たすことができませんでした。
また、これらの要件を満たすかどうかは税務署が個別に判断するものとされていました。

しかし、新制度ではこれらの要件を満たす必要はなく、認定も厚生労働大臣が行うことになっています。
このように、新制度は旧制度に比べて格段に「使い勝手のよい」制度となっています。
 

このブログ記事について

このページは、yoshikawaが2018年7月10日 17:01に書いたブログ記事です。

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