新年のごあいさつ

平成31年 新年あけましておめでとうございます。

ついに平成が終わる年となりました。
思い起こせば、私が監査法人に入所しこの業界に入ったのは、平成元年の10月でした。
当時はまだ会計士試験(当時は二次試験と言ってました)にも合格しておらず、
「研修生」として監査の現場等で補助者として働きながら、夜は試験予備校に通う生活でありました。
2年後、運良く試験に合格することができましたが、実務補習期間を経て公認会計士登録をした頃には、
バブルははじけ飛んでおり、その後の「失われた20年」を会計業界の片隅で過ごしてきました。
このように、私の会計士としての生活はまさに平成とともにあったわけです。

その平成が終わろうとしている今、一抹の寂しさを感じるとともに、来るべき時代がどのようなものになるのか、
期待と不安がないまぜになっています。

しかし、どんな時代になろうと私たちがやるべきことは変わらないはず、とも思っています。
今年も、そして5月からの新年号時代もどうぞよろしくお引き立てのほど、お願い申し上げます。

投資損益計画(予測)の重要性

前々回の記事で書きましたが、会計の本質は投下資本の回収計算です。
したがって、設備投資を行う際に最も重要な意思決定の基準は、
「その投資を行うことに見合う回収ができるかどうか?」にあります。
回収ができなければ「過剰投資」となってしまうことも前々回で書きました。
そこで、投資を考えるにあたっては回収できるかどうかを慎重に検討する必要があります。
これが投資損益計画(予測)といわれるもので、設備投資の判断に当たっての決定的に重要となります。

損益計画を立てるにあたっては設備投資から得られる収益を見込むことになるわけですが、
前回書いたように、一口に設備投資といってもその内容はさまざまであり、
そこから得られる収益(回収)も個々の投資計画ごとに異なってきます。
問題はその得られる収益ー費用の額と、その期間です。

まず、収益の額から考えていきましょう。
収益額=単価×数量 で計算されます。
医療機関における設備投資の場合、ほとんどは社会保険診療を想定しているでしょうから、
単価は保険診療点数という「定価」になっています。
また、自由診療の場合も、よほど特殊な診療でない限り他院との関係からある程度の「定価」が決まってきます。
したがって、念入りに予想しなければならないのは「数量」だということになります。
数量とは自院への来患数ですが、現在は年齢・男女別に傷病分類別の施設種類別推計患者数が厚生労働省から公表されています。
また、人口については各市町村のHPなどで公表されています。
これらの統計データを元に、自院の診療圏内で推定される潜在患者数を求めることができます。
さらに、潜在患者数に自院の市場占有率を乗じたものが来院患者見込み数となります。
来院患者見込み数×設備に関連する治療・診療行為の発生確率×診療報酬単価=その設備から得られる収益見込
となります。これが経済的に何年継続できるかで設備に係る総収入が求められます。
このとき、くれぐれも楽観的な予測を立てないことが重要です。
設備を導入すれば占有率が上がるという予測はできるかもしれませんが、それが「どの程度」かは難しい予測になります。

次に費用の面を考えてみましょう。
まず、設備投資を行った後は、減価償却費が発生します。
これは、初期投資額を設備の耐用年数(使用できる年数)に配分する作業です。
したがって、初期投資額が小さければ減価償却費は小さくなりますし、耐用年数が長いほど毎年の減価償却費は小さくなります。
しかし、設備には必ず寿命がありますし、永久に使い続けられる設備はありません。
また、使用に伴って得られる収益は設備が古くなるにしたがってだんだんと少なくなると言われています。
このため、損益計画を立案する際には、設備の耐用年数を元に計画を立てる必要があります。

次に設備のランニングコストを考える必要が出てきます。
ランニングコストには保守料、電気・水道料、固定資産税、修繕費などが含まれます。
また、設備導入に伴って人員を増やす必要があれば人件費も考慮しなければなりません。
逆に、業務効率化のための投資であれば余剰人員が発生するかもしれません。
しかし、余剰人員の整理は実際には難しい問題となりますので、人件費を削減するような計画は慎重に考慮すべきです。

さらに、収益-費用で利益が出れば(というか利益が出なければ投資を行うのが正しいのかということになります)税金を考慮する必要も出てきます。
税金は必ず発生するコストですので、忘れないようにしましょう。

設備投資の形態あれこれ

今回は設備投資の形態についてあれこれと考えてみましょう。
私は、設備投資について、概ね以下のような形態に分類できるのではないかと考えています。

導入時期(事業ライフサイクル)の側面から見た分類
①初期投資・・・新たな施設・設備を導入する投資(創業投資を含む)
②更新投資・・・現在保有している資産の経年劣化等による入れ替え投資

その目的の側面から見た分類
③拡大投資・・・生産能力の拡大又は新規市場への参入など、売上の増大を目的とする投資
④改良投資・・・製品の品質を改良したり、生産コストを下げることを目的とする投資

戦略目標の観点から見た分類
⑤内部環境対策投資・・・従業員の福利厚生施設や安全管理のための投資など、内部環境を整えるための投資
⑥外部環境対策投資・・・競合他社への対抗のためや法改正への対応など、外部環境変化に対応するための投資

実際の投資活動においては、上記のうちの複数の分類が重なって投資が行われることになります。
たとえば、競合する他の医療機関が新たな設備を導入し患者が他院に流出することが予想されるため、これに対抗して当院でも新たな機器を導入するという事例の場合、外部環境対策のための初期投資であることが想定されます。また、その機器が全く新しい機器であれば拡大投資と見ることができるでしょうし、既存機器の更新(16列のCTを64列にする等)であれば改良投資とみることができるでしょう。
このように、設備投資にあたっては様々な要素が絡み合っているため、いつ、何を、どういう目的で、何のために投資するのかをはっきりと意識しておくことが重要となります。

設備投資について思うこと

顧問先からのご相談でよくあるのが、投資意思決定に関するものです。
「〇〇を導入しようかと思うのですが、どうでしょうか?」
「病院の建てかえを検討しているのですが、いくらくらいまでならば大丈夫でしょうか?」
あるいは
「〇〇を導入する予定なのですが、購入とリースのどちらが有利でしょうか?」
このようなご相談がよくあります。
そこで、今回から数回に分けて、医療機関の投資について考えてみようと思います。

経営を行っていくうえで、最も恐いのは過剰投資です。
過剰投資の結果,、資金繰りに行き詰まった結果、倒産なんてことにもなりかねません。
しかし、「過剰投資するぞ~!」と思って投資する人は誰もいません。
投資した金額が回収できなくなると、結果的に「過剰投資」となってしまうのです。
なぜそうなるのか、まず会計的な側面から考えてみましょう。

会計は、実はとてもシンプルにできています。基本は「お金の出し入れ」です。
よく企業会計と言うと、やれ「貸借対照表」だの「損益計算書」だのと言いますが、基本はお金の出し入れです。
①事業を始めるためにお金を集め(出資又は借入)
②集めたお金を使い(設備投資又は費用の支出)
③収益(売上金)を獲得し
④獲得したお金を再投資し再度収益を得る、又は借入金を返済する。
このような、資金獲得⇒投資⇒回収⇒再投資・資金返済という、お金の出し入れの一連の流れを記録し、報告しているのが会計の本質です。
このような計算を「投下資本の回収計算」といいます。

このうち、最も重要なのが③の収益獲得です。
しかし、収益獲得が上手くいかなかった場合、
投資・費用の支出額+借入金の返済額(出て行くお金)<獲得した売上金の額(入ってくるお金)
となってしまい、どんどん資金が流出することになります。この状態が過剰投資です。
なぜそうなってしまうのか。
ひとことで言ってしまえば、「回収の見込みが甘かった」としか言いようがないのですが・・・
なぜ甘くなったかを考えないと、原因はいつまでたっても分かりません。
私はその原因はひとつではなく、設備投資の形態によって変わってくると考えています。

そこで次回は、設備投資の形態をあれこれと考えてみたいと思います。


医療法人の定款変更について

毎日猛烈な暑さが続いた夏ですが・・・
気がつけば、はや八月も終わろうとしています。

ところで、平成27年9月28日公布の医療法改正及び平成28年9月1日付けで同法が施行されたことに伴い、医療法人の新しい定款例が示されており、これに合わせた形で医療法人の定款変更が必要になっています。
なかでも、定款又は寄付行為に理事会に関する規定が書かれていない場合には、改正法附則第6条の規定に基づき、施行日から起算して2年以内に定款又は寄付行為の変更に係る認可申請をしなければならないと規定されています。

このため、現行定款等の内容によっては、この8月末までに定款変更認可申請をする必要があります。
また、その他の医療法人についてもできるだけ早期に定款変更することが望ましいとされていますので、定款が現行の定款例に沿ったものであるかどうか、確かめておく必要があります。
ご注意下さい。

結局、出資持分をどうすべきなのか?
これは大変に難しい問題です。

厚生労働省では、医療法人の出資持分に関して「持分によるリスクと持分なし法人への移行事例に関する調査研究 報告書」(持分なし医療法人への円滑な移行マニュアル改訂版)という調査研究結果を公表しています。該当webサイトはこちら(サイトの下半分にあります)
この研究報告で示されている医療法人の選択肢は次のとおりです。

持分あり法人⇒持分なし法人へ移行⇒①法定の要件を満たす場合 ⇒社会医療法人
               (医療法人への贈与税課税なし)   又は
                               特定医療法人
                 ②持分放棄等の定款変更  ⇒一般の持分なし医療法人
               (医療法人への贈与税課税あり)   又は
                               基金拠出型医療法人
今回改正された移行認定認定制度は上記①に追加されるべきものでしょう。

しかし、この報告書は移行を検討する法人への情報提供として作成されているため、もう一つの重要な選択肢が書いてありません。
それは「現状維持」という選択肢です。

解説の第1回目で、出資持分とは社員退社時の払戻請求権又は解散時の残余財産分配請求権であると述べました。また、第2回目では、出資持分が財産権であり、国が強制的になくすことはできないものとも書きました。
そう、出資持分は財産なのです。しかも、医療法人に内部留保として蓄えられた財産であり、その内部留保は役職員が一丸となって法人運営を行い、(安くないであろう)法人税を負担した後のものです。これだけ苦労して蓄えた内部留保は、現状維持=個人に帰すべき財産 という考えも当然あってしかるべきでしょう(厚労省の言い分は全く異なるかもしれませんが)。

ここから先は全くの「私見」となりますが・・・
私なら、苦労して蓄えた財産を放棄なんてしたくありません。他人にあげたくもありません。ましてや、もう一回税金(贈与税)を払ってお国に返すなんてまっぴらゴメンです。

その場合には「現状維持」を選択して、後継者が見つからなければ法人を解散して残余財産を分配してもらうか、あるいは自分が死んで相続となったら遺族に持分の払戻を受けてもらっていいと思います(法人は解散又はM&A等の方向に向かいます)。

しかし、後継者がいて法人の継続性が見込まれ、後継者が法人の内部留保を使う予定があるのであれば、後継者に全部使ってもらっても構わないとも思います。
そうなった場合には、出資持分を持っていることのリスクのほうが大問題となります。そのときは出資持分を放棄して、持分なし法人に移行するでしょう。

こう考えると、医療法人の出資持分をどうするかという問題は、事業承継の問題と表裏一体であることが分かります。

つまり、持分をどうするのかは、事業承継をどうするかが決まらないと決めようがないという側面があるのです。

もちろん、事業承継の方向性が完全に決まらないと何もできない、というわけではありません。
現に私のお客様でも、理事長の急死によって想定外の相続が発生し、身内では承継できなかったため副院長が事業を引き継いだ事例がありました。
この事例では、出資持分の払い戻しを行うと、法人運営に支障をきたす可能性が高かったことから出資持分の放棄に応じてもらい、移行認定制度を利用することで遺族の相続税免除と法人の贈与税納税猶予を認めてもらっています。
これは今のところ非常に上手くいっているケースです。
また、「財産権なんて要らないよ、贈与税でも何でも払うから、とにかく相続税の不安を解消してくれ!」と仰るかたは早々に持分なしに移行しましょう。

結論から言えば、「医療法人の出資持分は事業承継の問題と併せて、できるだけ早めに検討しておくに越したことはない」というありきたりな言い方になってしまいます。
ここまで延々と書き連ねてきた挙げ句に「へなへな~」となってしまう結論ですが、一般論としてはこのようにしか書きようがありません。

そのような、何とも難しい出資持分の取扱において、今回の移行計画認定制度はある意味「画期的」な制度となっており、種々の選択肢の中に入れて検討してみるべき制度であると思います。
ただし、ここまで苦労してお読みいただいた方には、もうお分かりかもしれませんが、この制度を適用できる局面はそれほど多くないと思います(一説によれば、厚労省の目標としては1,000件程度とのです)。
しかし、もしも適用条件が合えば、事業承継(特に親子間承継)を行う上で、非常にメリットのある制度であることは間違いありません。
まだ検討されていない法人におかれては、早急に検討されることをお勧めします。
あと2年しかありません(準備期間を考えたら実質1年?です)。

医療法人の事業承継については、これもまた長くなるので別途記述したいと思います。

第4回の4回目
今回は最後の2要件です。
(7)自費患者に対し請求する金額が、社会保険診療報酬と同一の基準により計算されること
(8)医業収入が医業費用の150%以内であること

まず、「自費患者に対し請求する金額が、社会保険診療報酬と同一の基準により計算されること」(医療法施行規則第57条の2第1項第2号ロ)についてです。
ここでは
①自費患者とはどの範囲をいうのか
②社会保険診療と「同一の基準」とはどのようなことをいうのか
が問題となります。
①については、「自費患者」とは、社会保険診療又は労災保険診療に係る患者以外の患者であるとされています。
社会保険診療とは租税特別措置法第二十六条第二項に規定する社会保険診療をいうものと規定されていますので、前回の社会保険診療「等」に係る収入金額で出てきた社会保険診療と範囲は同じになります。労災保険も同様です。

②については以下のとおりとなっています。
「社会保険診療報酬と同一の基準」とは、次に掲げるもののほか、その法人の診療報酬の額が診療報酬の算定方法の別表に掲げる療養について、同告示及び健康保険法の施行に関する諸通達の定めるところにより算定した額程度以下であることの定めがされており、かつ、報酬の徴収が現にその定めに従ってされているものであること
(イ) 公害健康被害者に係る診療報酬及び予防接種により健康被害者に係る診療報酬にあっては、法令等に基づいて規定される額
(ロ) 分娩料等健康保険法の規定に類似のものが定められていないものにあっては、地域における標準的な料金として診療報酬規定に定められた額を超えない額

また、上記の算定については、必ずしも1点10円としなければならないわけではなく、Q&Aに以下の回答が記載されています。
『「持分の定めのない医療法人への移行に関する計画の認定制度について(H29 年9 月29 日付け医政局医療経営支援課長通知)」記 第24(7)のとおりであるが、診療報酬の算定方法等により算定した額「程度」以下とされている。
「程度」であり、1 点10 円に限らない。多くの地域で定められている自賠責保険の診療費算定基準は、薬剤等モノを1 点12 円とし、その他の技術料はこれに20%を加算した額を上限としており、これは妥当と認めている。』

最後に「医業収入が医業費用の150%以内であること」の要件です。
条文上は、「医療診療により収入する金額が、医師、看護師等の給与、医療の提供に要する費用(投薬費を含む。)等患者のために直接必要な経費の額に百分の百五十を乗じて得た額の範囲内であること。(医療法施行規則第57条の2第1項第2号ハ)」となっています。
ここでは
①医療診療とは何を言うのか
②収入する金額とは何か
③患者のために直接必要な経費の額とは何か
が問題となります。その内容はそれぞれ以下のとおりです。
①については
医療診療とは:社会保険診療、労災保険法に係る診療及び自費患者に係る診療
②については
収入する金額とは:損益計算書の本来業務事業損益に係る事業収益の額
③については
直接必要な経費の額とは:損益計算書の本来業務事業損益に係る事業費用の額
とされています。
②における①についての収入金額と③の金額の比率が150%以内であることが要件です。

したがって、本来業務と附帯業務を行っている場合には、それらを区分して経理する必要が出てきます。
もっとも、都道府県等への決算届けの様式上、本来業務と附帯業務は区分して損益計算書を作成するようになっていますので、決算届けを適正に提出している限り問題とはなりません。
また、実際にこの比率が150%を超えるというケースはあまりないかと思います。

確認のため記載しておきますが、医療法人の本来業務とは医療法第39条第1項に掲げる業務をいいます。
医療法第39条 病院医師若しくは歯科医師が常時勤務する診療所介護老人保健施設又は介護医療院を開設しようとする社団又は財団は、この法律の規定により、これを法人とすることができる。
この4種類の施設だけが医療法人の本来業務です。それ以外は全て附帯業務となります。
ちなみに、医療法人が行うことができる附帯業務とは医療法第42条各号に掲げられている業務となります。

承前~
今回解説するのは次の2要件です。
(5)法令に違反する事実、帳簿書類の隠蔽等の事実その他公益に反する事実がないこと
(6)社会保険診療等(介護、助産、予防接種含む)に係る収入金額が全収入金額の80%を超えること

医療法施行規則では(5)の要件について以下のように規定されています。
「当該経過措置医療法人につき法令に違反する事実、その帳簿書類に取引の全部若しくは一部を隠蔽し、又は仮装して記録若しくは記載をしている事実その他公益に反する事実がないこと。」(医療法施行規則第57条の2第1項1号ホ)

このうち、法令に違反する事実とは医療に関する法令の場合には次のいずれかの事実がある場合とされています。
(イ) 医療に関する法律に基づき医療法人又はその理事長が罰金刑以上の刑事処分を受けた場合
(ロ) 医療法人の開設する医療機関に対する医療監視の結果、重大な不適合事項があり、都道府県知事から改善勧告が行われたが是正されない場合
(ハ) 医療法第30条の11の規定に基づく都道府県知事の勧告に反する病院の開設、増床又は病床種別の変更が行われた場合
(ニ) 医療法人の業務若しくは会計が法令、法令に基づく都道府県知事の処分、定款に違反し、又はその運営が著しく適正を欠くと認められた場合であって、医療法第64条第1項の必要な措置をとるべき旨の命令若しくは同条第2項の業務の全部若しくは一部の停止の命令又は役員の解任の勧告が発せられた場合
(ホ) その他(イ)から(ニ)までに相当する医療関係法令についての重大な違反事実があった場合


では、公益に違反する事実とは具体的にどのようなことを言うのでしょうか?
これについては質疑応答集に以下のようなQ&Aが示されています。

Q7.相続税法施行令第33条第3項第4号に規定されている「公益に反する事実」は、具体的にどのような事実か。例えば、脱税行為や診療報酬の不正請求は、これに当たるのか。
A7.「公益に反する事実」というのは、個別の事案の事情により、いろいろな角度から検討されるべきものである。例えば、一般的に脱税行為や診療報酬の不正請求はこれに当たるものと考えられるが、最終的には、個別の事案に応じて、その行為の違法性など、様々な事情を勘案して総合的に判断するものと思われる。

私たち税理士は「仮装・隠蔽」と聞いた瞬間に「重加算税」と連想してしまうのですが、ここでは「脱税行為」と書いてあります。厳密には重加算税の対象と脱税とはイコールではないので、脱税行為がどこまでを指すのか判断に困るのですが、少なくとも重加算税の対象となる仮装隠蔽行為があったら難しいのではないでしょうか。

次に「社会保険診療等(介護、助産、予防接種含む)に係る収入金額が全収入金額の80%を超えること」についてです。

全収入金額とは本来業務・附帯業務に係る事業収益の合計額を言います。
これが分母であり、分子は社会保険診療等に係る収入金額です。その比率が80%超であることが要件となっています。

ここで注意しなければならないのは「社会保険診療等」の範囲です。
社会保険診療等とは以下のものとされています。
・租税特別措置法に規定する社会保険診療※1
・健康増進法第4条に規定する健康増進事業のうち健康診査に係る収入金額※2
・定期予防接種、臨時予防接種及び任意の予防接種のうち厚生労働大臣が定める予防
接種に係る収入金額※3
・助産(社会保険診療・健康増進事業に係るものを除く)に係る収入金額(50万円を
限度)
・介護保険法の規定に基づく保険給付に係る収入金額※4

※1社会保険診療には、介護保険法の規定による
・指定居宅サービス(訪問看護、訪問リハビリテーション、居宅療養管理指導、通所リハビリテーション、短期入所療養介護に限る)のうち、当該居宅介護サービス費の額の算定に係る当該指定居宅サービスに要する費用の額として介護保険法の規定により定める金額に相当する部分
・指定介護予防サービス(介護予防訪問看護、介護予防訪問リハビリテーション、介護予防居宅療養管理指導、介護予防通所リハビリテーション、介護予防短期入所療養介護に限る)のうち、当該介護予防サービス費の額の算定に係る当該指定介護予防サービスに要する費用の額として介護保険法の規定により定める金額に相当する部分を含む
※2健康増進事業に係る収入金額とは、次に掲げる健康診査等に係る収入金額の合計額(社会保険診療報酬と同一の基準により計算されているものに限る)
(イ)健康保険法の規定により保険者が行う健康診査
(ロ)船員保険法の規定により全国健康保険協会が行う健康診査
(ハ)国民健康保険法の規定により保険者が行う健康診査
(ニ)国家公務員共済組合法の規定により行う国家公務員共済組合又は国家公務員共済組合連合会が行う健康診査
(ホ)地方公務員等共済組合法の規定により地方公務員共済組合又は全国市町村職員共済組合連合会が行う健康診査
(ヘ)私立学校教職員共済法の規定により日本私立学校振興・共済事業団が行う健康診査
(ト)学校保健安全法の規定により学校において実施される健康診断又は市町村の教育委員会が行う健康診断
(チ)母子保健法の規定により市町村が行う健康診査
(リ)労働安全衛生法の規定により事業者が行う健康診断若しくは労働者が受ける健康診断又は労働者が自ら受ける健康診断
(ヌ)高齢者の医療の確保に関する法律により保険者が行う特定健康診査及び後期高齢者医療広域連合が行う健康診査
※3厚生労働大臣が告示で定める予防接種
(イ)麻しんに係る予防接種(定期の予防接種等を除く)
(ロ)風しんに係る予防接種(定期の予防接種等を除く)
(ハ)インフルエンザに係る予防接種(定期の予防接種等を除く)
(ニ)おたふくかぜに係る予防接種
(ホ)ロタウィルス感染症に係る予防接種
※4租税特別措置法26条第2項第4号に規定するものを除く
以下は租税特別措置法の該当条文です(括弧書きを外し、適宜句読点を付し改行してあります)
介護保険法の規定によつて居宅介護サービス費を支給することとされる被保険者に係る指定居宅サービスのうち、当該居宅介護サービス費の額の算定に係る当該指定居宅サービスに要する費用の額として同法の規定により定める金額に相当する部分、
同法の規定によつて介護予防サービス費を支給することとされる被保険者に係る指定介護予防サービスのうち、当該介護予防サービス費の額の算定に係る当該指定介護予防サービスに要する費用の額として同法の規定により定める金額に相当する部分、
若しくは同法の規定によつて施設介護サービス費を支給することとされる被保険者に係る介護保健施設サービスのうち、当該施設介護サービス費の額の算定に係る当該介護保健施設サービスに要する費用の額として同法の規定により定める金額に相当する部分
又は、健康保険法等の一部を改正する法律附則第百三十条の二第一項の規定により、なおその効力を有するものとされる同法第二十六条の規定による改正前の介護保険法の規定によつて施設介護サービス費を支給することとされる被保険者に係る指定介護療養施設サービスのうち、当該施設介護サービス費の額の算定に係る当該指定介護療養施設サービスに要する費用の額として同法の規定により定める金額に相当する部分

介護保険による給付が全て含まれるほか、予防接種についても社会保険診療に含まれることとされています。
この点、特定医療法人や社会医療法人における認定基準よりも幅広くなっていることが特徴です。

承前~前回に引き続き、申請に係る実務上の問題点を解説します。
今回の要件は以下の2点です。
(3)株式会社等に対し、特別の利益を与えないこと
(4)遊休財産額は事業にかかる費用の額を超えないこと

まず「株式会社等に対し、特別の利益を与えないこと」について。
この要件を読んでまず思い浮かべるのは、いわゆるMS法人ではないでしょうか。
しかし、ここでいう「特別の利益を与えないこと」は次のように規定されています。
 その事業を行うに当たり、
 株式会社その他の営利事業を営む者
 又は特定の個人若しくは団体の利益を図る活動を行う者
 に対し、寄附その他の特別の利益を与える行為を行わないものであること。
 (医療法施行規則附則第57条の2第1項第1号ハ)
つまり、株式会社等の営利企業のほか、「特定の個人もしくは団体の利益を図る活動を行う者」に対する特別の利益供与も禁止されているわけです。

さらに、特定の個人もしくは団体の利益を図る活動を行う者とは以下のように規定されています。
①株式会社その他の営利事業を営む者に対して寄附その他の特別の利益を与える活動(公益法人等に対して、当該公益法人等が行う公益社団法人及び公益財団法人の認定等に関する法律(平成18年改正法律第49号)第2条第4号に規定する公益目的事業又は医学若しくは医術又は公衆衛生に関する事業のために寄附その他の特別の利益を与えるものを除く)を行う個人又は団体

 ちょっと分かりにくいですね。こんな時には括弧を外して読みます。
 株式会社その他の営利事業を営む者に対して寄附その他の特別の利益を与える活動を行う個人又は団体
 ただし、公益法人等に対して、当該公益法人等が行う公益目的事業又は医学若しくは医術又は公衆衛生に関する事業のために寄附その他の特別の利益を与えるものを除く

 ですから、例えば院長先生の出身大学(国立大学法人、学校法人など)に対して、医療の研究・発展のために行う寄付などは問題ありません。

②特定の者から継続的に若しくは反復して資産の譲渡、貸付け若しくは役務の提供を受ける者又は特定の者の行う会員等相互の支援、交流、連絡その他その対象が会員等である活動に参加する者に共通する利益を図る活動を行うことを主たる目的とする団体

 上記②に当てはまるものとしては、例えば医学部の同窓会などがあります。これはダメということですね。

このように、同じような寄付金でも、大学法人に対するものと同窓会などに対するものとでは扱いが異なってきますので注意が必要です。

また、MS法人については、MS法人が存在していることのみをもって、「特別の利益を与えない」という要件を満たさないことにはならないことが質疑応答集で示されています。
つまり、前回の法人関係者に対する特別の利益供与と同様に、個々の事例ごとに判断されることになりますが、会社との取引については、公益法人に対する贈与税の取り扱いに関する税務通達が参考となります。

法第66条第4項に規定する「負担が不当に減少する結果となると認められる場合」(筆者注:法人を個人とみなして贈与税が課税される場合をいいます)とは、次のいずれかに該当すると認められる場合がこれに該当するものとして取り扱う。
 ~略~
(2)贈与等を受けた法人が、贈与等をした者又はその親族その他特殊の関係がある者に対して、次に掲げるいずれかの行為をし、又は行為をすると認められる場合
 ~略~
チ 契約金額が少額なものを除き、入札等公正な方法によらないで、これらの者が行う物品の販売、工事請負、役務提供、物品の賃貸その他の事業に係る契約の相手方となること

このように、MS法人との取引を行うにあたっては、金額が僅少なものを除き入札等の方法によることが求められているため、契約を行うに際しての内規を整備し、運用することが必要となってきます。
また、医療法人の役員がMS法人の役員を兼務している場合には、兼務を解消しない限り申請できないとされています。
これは医療機関の開設者である法人の役員については、原則として当該医療機関の開設・経営上の利害関係にある営利法人等の役職員を兼務しないこと(「医療機関の開設者の確認及び非営利性の確認について」平成5年2月3日厚生省健康政策局総務課長・指導課長通知)となっており、医療法人の運営上問題があるためとされています。

次に(4)「遊休財産額は事業にかかる費用の額を超えないこと」についてです。
まず、「遊休財産額」って何?と思われるのではないでしょうか。
遊休財産額は以下のように定義されています。
遊休財産額とは、当該医療法人の業務のために現に使用されておらず、かつ、引き続き使用されることが見込まれない財産の価額の合計額として、直近に終了した会計年度の貸借対照表に計上する資産の総額から、次の(イ)~(ホ)までに掲げる資産のうち保有する資産の明細表に記載されたものの帳簿価額の合計額を控除した額に、純資産の額の資産の総額に対する割合を乗じて得た額とする。
(イ)当該医療法人が開設する病院、診療所又は介護老人保健施設の業務の用に供する財産
(ロ)医療法第42条各号に規定する業務の用に供する財産【附帯業務】
(ハ)(イ)及び(ロ)に掲げる業務を行うために保有する財産
(ニ)(イ)及び(ロ)に掲げる業務を行うための財産の取得又は改良に充てるために保有する資金
(ホ)将来の特定の事業(定款に定められた事業に限る)の実施のために特別に支出する費用にかかる支出に充てるために保有する資金

ざっくり言うと、医療法人の事業(本来事業、附帯事業)の用(上記イ~ハ)に供されておらず、将来使用される見込み(上記ニ~ホ)がないものに純資産比率を掛けたもの、となります。
したがって、純資産が大きくなっているがそれを再投資に回さず(具体的な投資計画があるものは大丈夫です)、現金預金等として保有している法人はこの要件に引っかかる可能性が高くなります。

ところで、退職金資金の手当として生命保険契約に加入し、保険料の一部を保険積立金等として処理されている法人も多いかと思います。しかし、このような保険積立金については「業務の用に供される」資産とならないことがQ&Aで示されていますのでご注意ください。

また、遊休財産額と対比される「費用の額」とは法人の本来業務の事業費用とされています。
したがって、法人の経理において本来事業部分と附帯事業部分とを区分計算することが必要となります。
ちなみに、何が本来事業で何が附帯事業となるのかは法人の定款を見れば分かります。

閑話休題~次のワールドカップは?~

閑話休題

もはや時期遅れの感もありますが・・・

ワールドカップ、終わっちゃいました。またこれから4年も待たないといけません。
あまり期待されずに本大会に入った日本代表ですが、終わってみれば大成功!と言えるのではないでしょうか。
日本がこれから世界で勝ち抜いていくための方向性がかいま見えたいっぽうで、現状での課題も見えたという気がします。

さて、順調にいけば次のワールドカップは2022年カタール大会となるのですが、「本当に開催できるのか???」という疑問が未だに残ってます。

日本でもここ1、2週間の暑さ、尋常ではないですよね。
6月のドーハの平均気温、30℃から40℃だそうです。
つまり今くらいの暑さの中でサッカーの試合をやり、観戦するわけで・・・
熱中症患者、どれくらい出るんでしょうか。

また、政治的な問題とか、そもそも開催地選考過程の問題とかで、カタールの開催権剥奪!なんてことも言われ続けてます。

もしも剥奪された場合には代替地を選ぶことになるのですが、これに関してはアメリカ、イングランド、日本、などが挙げられているようです。

このうち、アメリカは2026年のカナダ。メキシコとの共同開催が決定したのでナシ。
日本は2020年にオリンピックをやったばかりだし、梅雨真っ最中にはやって欲しくない。
ということで、消去法でイングランドとなるのですが、2019年にブレグジット(EU離脱)したばかりでどうなってるか分かりませんよ!ってこともあります。

個人的にはイングランドと言わず、大ブリテン開催ということにして欲しいです。
その場合、開催国枠での出場チームをどうするのかが問題になってしまいますが・・・

早くプレミア開幕しないかなぁ