2020年1月アーカイブ

医療機関の働き方改革対応

昨年(2019年)4月1日から、働き方改革関連法が部分施行されています。
今年からは施行範囲が広がりますが、内容によっては医療機関の経営に重要な影響を与える事がらが含まれています。
サクッとおさらいしておきましょう。

働き方改革関連法案とは、雇用対策法、労働基準法、労働時間等設定改善法、労働安全衛生法、じん肺法、パートタイム労働法、労働契約法、労働者派遣法の改正に係る法律の通称です。(たくさんありますね・・・)

主要なポイントは以下の三つです。
①時間外労働の上限規制
②年次有給休暇の確実な取得
③正規雇用者と非正規雇用者の待遇格差禁止

①については2019年4月1日に施行済です。ただし中小企業(出資金5千万円以下、又は常時雇用者100人以下の企業)は2020年4月1日から摘要されます。
なお、医師については応召義務の関係から2024年度からの適用となっています。
時間外労働の上限は、原則として月45時間、年間360時間とし、臨時的な特別の理由があり労使合意がある場合でも年間720時間、毎月100時間未満、複数月平均80時間を超えることができません。
この規制には罰則規定(6か月以下の懲役または30万円以下の罰金)が設けられています。

②については2019年4月1日から実施されています。
医師を含め、10日以上の年次有給休暇が付与される労働者に対して、使用者は毎年5日、時季を指定して有給休暇を与える必要があります。

③については2020年4月1日から(中小企業は2021年4月1日から)実施されます。
実施後はパート勤務の方も賞与や基本給を同じ対偶にする必要があります。
ここで問題となるのが、パート労働者(特に主婦)の配偶者控除枠(いわゆる103万円のカベ)です。
103万円を超えても201万円までは配偶者特別控除というのがあるのですが、扶養手当等の基準が103万円のままだったり、国民年金の3号被保険者の所得制限が130万円だったりと、実際問題として、103万円のカベはしぶとく残っています。
控除の枠内でボーナスを支給することになれば、1人あたりの労働時間を削るしかありません。
そうなれば、パートの頭数を増やす必要に迫られることにもなりかねません。需要が高まれば、医療機関の人手不足に拍車がかかることでしょう。
また、枠を超えて支給するとしても、いずれにせよ人件費負担の増加が不可避です。

今年度からは、このような人事・人件費の問題を考慮することが必要となります。

先日、親しくさせていただいている取引関係の方からご質問をいただきました。
MS法人が医療法人の出資持分を持つことができるか?という内容だったのですが、
この点については、平成28年3月25日発出の厚生労働省医政局長通知「医療法人の機関について」で明らかにされています。
しかし、まだご存じない方もいらっしゃるようなので、おさらいを兼ねて書いておきたいと思います。

①MS法人は医療法人の出資持分を持てるか?
A:持つことができます。
上記の局長通知が発出される以前に「医療法人に対する出資又は寄附について」という疑義照会が行われ、「出資又は寄附によって医療法人に財産を提供する行為は可能であるが、それに伴っての社員としての社員総会における議決権を取得することや役員として医療法人の経営に参画することはできない」旨、回答されています(平成3年1月17日東京弁護士会会長あて厚生省健康政策局指導課長回答)。
つまり、法人が医療法人に出資することは可能だが、社員となることはできないと解され、これが実務上も通説となっていました。

②MS法人は医療法人の社員になれるか?
A:なれません。
上記の局長通知では「社団たる医療法人の社員には、自然人だけでなく法人(営利を目的とする法人を除く。)もなることができること。」と明記されています。
ここで、営利を目的とする法人とは、利益の配当を行う法人(株式会社、有限会社、合同会社等)を言います。MS法人はほぼこの中のいずれかに該当するでしょうから、社員となることはできません。
逆に言えば、利益の配当を行わない法人(社団法人、財団法人など)は社員となれます。

③営利を目的としない法人は医療法人の社員となり、出資持分を保有できるか?
A:できません。
①、②からは、営利を目的としない法人が医療法人の社員となり、出資持分を持つことが可能なように思えますが、局長通知に添付された「医療法人の運営管理指導要綱」の「社員」の欄に以下の記載があります。
「なお、法人社員が持分を持つことは、法人運営の安定性の観点から適当でないこと」
このため、仮に営利を目的としない法人が医療法人の社員となっても、この法人社員は持分を持つことができません。

④注意事項
上記のように、MS法人が出資持分を持つこと自体は可能なのですが、自然人と違い、法人は死亡することがなく、また、社員になれない以上、退社(医療法人の社員から退くこと)することができません。
このため、出資持分の払戻請求を行うことができず、唯一、医療法人解散時の残余財産請求権だけが発生することになります。

令和2年分の源泉徴収に注意

令和2年分の所得税から、従来とは大きく異なる取り扱いがあります。
具体的には、
①給与所得控除の引き下げ
全体として一律10万円引き下げ。年収850万円を越えた場合は195万円を上限として打ち止め。
例えば、令和元年に年収1,000万円超だった人は給与所得控除が220万円でしたが、
これが一気に25万円も引き下げられています。

②基礎控除の引き上げ
これまで38万円だったものが、合計所得金額2,400万円までは48万円となり、10万円アップ
このため、年収850万円以下の方は影響ありません。
しかし、年収2,400万円を超えると基礎控除が低減していき、2,500万円を超えると基礎控除ゼロとなります。
ただし、税負担を考慮して、本人か扶養家族に障害者がいる場合、又は23歳未満の扶養親族がいる場合は、
給与収入(1,000万円を超える場合は1,000万円)から850万円を控除した金額の10%を所得控除とする
「所得税額調整控除」という新たな制度が設けられました。

このように、令和2年からは高額所得者に増税となる改正が行われています。
また、これに合わせて源泉徴収税額表も改定されています。
医療機関では(特にドクター)、毎月の源泉徴収税額が大きくなることが予想されます。
このため、給与ソフトウェアの更新など、適切な対応を取っておく必要がありますので注意が必要です。

令和2年税制改正大綱

令和2年の税制改正大綱が令和元年12月20日に閣議決定されました。

医療関係で注目されるのは、なんと言っても「持分なし医療法人への移行認定制度」
関連の適用時期が3年間延長されることでしょう。

ただし、「良質な医療を提供する体制の確立を図るための医療法等の一部を改正する法律の改正」が前提となっていますので、もう一つハードルがあるっちゃあるのですが・・・

いずれにせよ、今年9月末までであった適用期限が令和5年9月末まで延長されるのは、
時間切れであきらめかけていた法人関係者にとってはありがたいことでしょう。

年頭のごあいさつ。

令和2年 明けましておめでとうございます。
今年が皆様にとって実りある素晴らしい年でありますよう、祈念申し上げます。

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