「No」と言う会計士「Yes」と言うコンサルタント

ずいぶん前の話になりますが。。。かれこれ20年くらい前?のことです。
あるところで、カナダ人の元経営コンサルタントという方にお目にかかる機会がありました。
自己紹介の後で「ご職業は?」という流れになり、私が「CPA(公認会計士の略称※)です。XXファーム(会計事務所)で働いています。」と答えたら、「ahhhh 、私は以前〇〇コンサルティングで経営コンサルタントとして働いていたんですよ。」とのこと。
※米国ではCertified Public Accountant 英国ではChartered Accountant カナダではChartered Professional Accountant と言います。なお、CPAの発音を丁寧に指導いただいたのはご愛嬌・・・

ここからが本題ですが、その方が「会計士は常にNo!No!と言い、コンサルタントは常にYes!Yes!Yes!というんだよね~」と笑いながら仰ってました。
もちろん冗談で、私もそれっきり忘れていたのですが、最近、ふと、このときのことを思い出しました。

確かに、会計士は「No」と言うことが多いと思います。実際には「う~ん、それにはこういうリスクがあるので厳しいんじゃないでしょうか?」と遠回しに言いますが。。。
会計士には、まず「リスクを回避・最小化する」という思考が働きがちです。これは私自身が感じていることですが、他の会計士さんも賛同いただけるのではないでしょうか。
これに対して、コンサルタントは「目標を実現する」ためにどうするか、という思考が働くのではないかと思います。このため、往々にして「Yes!」と言いがちなのかなと。
これらは、良いか悪いかという話しではありません。単に、ひとつの物事に対するアプローチの違いです。

さて、私は会計士でありますが同時に医業経営コンサルタントでもあります。
両面を持つ私はYesと言うのかNoと言うのか??

コンサルタントとして関わることが多いのは、開業支援の局面です。
これまで何度も開業のお手伝いをしてきましたが、やはり開業前は厳しめの利益予測をしてしまいます(他のコンサルさんが出してこられる計画が甘すぎることも多いのですが・・・)。
また、初期投資を極力抑えるように思考するのもそうでしょう。
会計士は、どうしても貸借対照表が「重く」なるのがイヤなんですよね。
※「重い」とは借金と資産、どちらも多額な状態をいいます。
そういう意味では、確かに私は「No!」と言う会計士です。

では、何でもかんでも「No」と言うかといえば、そうでもありません。
将来の拡張余地を確保する場合や、診療の特色となる医療機器の導入など、投資に見合う回収が十分に期待できる場合には、こちらから積極的に提案させていただくこともあります。

要はバランスの問題だと思います。
初期投資は抑えたい、しかし、初期投資を抑えることに汲々とするあまり、せっかくの回収機会を逃してしまっては元も子もありません。
そんなときには「Yes!Yes!」と言うでしょう。

リスクを負うのは経営者となる先生ご自身ですので、最終的な意思決定を下せるのは先生ご自身しかありません。
しかし、意思決定の参考となる情報提供は、私たち専門家の役割です。そこでは厳しいことを言うかもしれません。
また、開業後、経営が軌道に乗るまでの期間、経営者はいろいろな不安に耐えなければなりません。
そのような不安に寄り添ってあげるのも、私たちコンサルタントの役割だと思っています。

つまり、「No」だけでもなく「Yes」だけでもなく、その時々に応じた(専門的な)助言を行うことが重要なのだよな、と改めて思った次第です。


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このページは、yoshikawaが2020年9月27日 15:51に書いたブログ記事です。

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