相続時における医療法人の出資持分評価と課税関係 その1

相続が発生した時の医療法人の出資持分はどのように評価され、課税関係はどうなるのでしょうか?
いまさらのように思われるかもしれませんが、ご質問をいただいたので備忘録的に整理しておこうと思います。

①医療法人の「出資持分」とは何か?
医療法人の出資持分とは「定款の定めるところにより、出資額に応じて払戻し又は残余財産の分配を受ける権利」をいいます(医療法附則第 10 条の3第3項第2号カッコ書参照)。
平成19年施行の改正医療法以後は、定款に上記のような定めを置くことができなくなったため、基本的に平成19年度以降に設立された医療法人は全て「持分なし」医療法人です。
それ以前に設立された医療法人で、上記のような持分の定めを置いている法人を「持分あり医療法人」といい、法的には「経過措置医療法人」と呼びます。
その本質は払戻又は分配を受ける権利であり、「財産権」です。
以下は全て、上記のような出資持分あり医療法人に関しての記述になります。

②相続発生時の出資持分は誰に帰属するか
持分あり医療法人では、定款で「社員資格喪失」時に「払戻を請求できる」旨の規定が置かれています。
(解散時の残余財産分配請求権もありますがここでは割愛します)
では、出資持分を持っている方(医療法人の社員であるとします)がお亡くなりになったらその出資持分はだれに帰属するのでしょうか。
答えは、「亡くなった方」です。正確には「亡くなった方に社員資格喪失(死亡)に伴う払戻請求権が発生し、同時に払戻請求権が相続財産として相続人に帰属する」ことになります。
なお、社員資格の喪失原因には ①退社 ②死亡 ③除名 の三つがあります。
この結果として、相続人が払戻請求権者となります。
ここで重要なのは、相続するのはあくまでも「払戻請求権」であるという点です。
ただし、この払戻請求権を行使するか否かでその後の取扱が変わってきます。

③払戻請求権の取扱
相続した払戻請求権については次のような取扱が考えられます。
(a)払戻請求権を行使し、医療法人に対して払戻を請求する。
(b)払戻請求権を行使せず、医療法人の社員として持分を保有する。
(c)払戻請求権を行使しないが、医療法人の社員にもならない。
さらに、(a)(b)はそれぞれ以下のように細分化されます。
(a-1)直ちに払戻を請求する場合
(a-2)ある程度の期間経過後、払戻を請求する場合
(b-1)以前から社員であった者が持分を相続する場合
(b-2)社員でなかった者が新たに社員として入社し、持分を相続する場合

その2では、それぞれの場合ごとの評価方法と課税関係について解説します。
~その2に続く~

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このページは、yoshikawaが2020年11月10日 15:28に書いたブログ記事です。

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