持分なし医療法人への移行計画認定制度の解説~4回目~4/4

第4回の4回目
今回は最後の2要件です。
(7)自費患者に対し請求する金額が、社会保険診療報酬と同一の基準により計算されること
(8)医業収入が医業費用の150%以内であること

まず、「自費患者に対し請求する金額が、社会保険診療報酬と同一の基準により計算されること」(医療法施行規則第57条の2第1項第2号ロ)についてです。
ここでは
①自費患者とはどの範囲をいうのか
②社会保険診療と「同一の基準」とはどのようなことをいうのか
が問題となります。
①については、「自費患者」とは、社会保険診療又は労災保険診療に係る患者以外の患者であるとされています。
社会保険診療とは租税特別措置法第二十六条第二項に規定する社会保険診療をいうものと規定されていますので、前回の社会保険診療「等」に係る収入金額で出てきた社会保険診療と範囲は同じになります。労災保険も同様です。

②については以下のとおりとなっています。
「社会保険診療報酬と同一の基準」とは、次に掲げるもののほか、その法人の診療報酬の額が診療報酬の算定方法の別表に掲げる療養について、同告示及び健康保険法の施行に関する諸通達の定めるところにより算定した額程度以下であることの定めがされており、かつ、報酬の徴収が現にその定めに従ってされているものであること
(イ) 公害健康被害者に係る診療報酬及び予防接種により健康被害者に係る診療報酬にあっては、法令等に基づいて規定される額
(ロ) 分娩料等健康保険法の規定に類似のものが定められていないものにあっては、地域における標準的な料金として診療報酬規定に定められた額を超えない額

また、上記の算定については、必ずしも1点10円としなければならないわけではなく、Q&Aに以下の回答が記載されています。
『「持分の定めのない医療法人への移行に関する計画の認定制度について(H29 年9 月29 日付け医政局医療経営支援課長通知)」記 第24(7)のとおりであるが、診療報酬の算定方法等により算定した額「程度」以下とされている。
「程度」であり、1 点10 円に限らない。多くの地域で定められている自賠責保険の診療費算定基準は、薬剤等モノを1 点12 円とし、その他の技術料はこれに20%を加算した額を上限としており、これは妥当と認めている。』

最後に「医業収入が医業費用の150%以内であること」の要件です。
条文上は、「医療診療により収入する金額が、医師、看護師等の給与、医療の提供に要する費用(投薬費を含む。)等患者のために直接必要な経費の額に百分の百五十を乗じて得た額の範囲内であること。(医療法施行規則第57条の2第1項第2号ハ)」となっています。
ここでは
①医療診療とは何を言うのか
②収入する金額とは何か
③患者のために直接必要な経費の額とは何か
が問題となります。その内容はそれぞれ以下のとおりです。
①については
医療診療とは:社会保険診療、労災保険法に係る診療及び自費患者に係る診療
②については
収入する金額とは:損益計算書の本来業務事業損益に係る事業収益の額
③については
直接必要な経費の額とは:損益計算書の本来業務事業損益に係る事業費用の額
とされています。
②における①についての収入金額と③の金額の比率が150%以内であることが要件です。

したがって、本来業務と附帯業務を行っている場合には、それらを区分して経理する必要が出てきます。
もっとも、都道府県等への決算届けの様式上、本来業務と附帯業務は区分して損益計算書を作成するようになっていますので、決算届けを適正に提出している限り問題とはなりません。
また、実際にこの比率が150%を超えるというケースはあまりないかと思います。

確認のため記載しておきますが、医療法人の本来業務とは医療法第39条第1項に掲げる業務をいいます。
医療法第39条 病院医師若しくは歯科医師が常時勤務する診療所介護老人保健施設又は介護医療院を開設しようとする社団又は財団は、この法律の規定により、これを法人とすることができる。
この4種類の施設だけが医療法人の本来業務です。それ以外は全て附帯業務となります。
ちなみに、医療法人が行うことができる附帯業務とは医療法第42条各号に掲げられている業務となります。

このブログ記事について

このページは、yoshikawaが2018年7月25日 10:08に書いたブログ記事です。

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